virgo catの小説倉庫

virgo catが初の小説に挑戦!(前から書いてみたかった)

アナザー・ディメンション

「と言っても、あの時本当は録音なんてしてなかったんだよね~」

学校から家に向かっている途中、光咲はそんなことをつぶやいた。

「え?・・・ということは・・・」

「ということは、も何もないでしょ?私、携帯の録音の仕方とか知らないし」

「じゃあ失敗した時どうするつもりだったんですか!?」

「いや、その時はその時だしそれに失敗するとも思えなかったしね~」

「・・・」

この人は人生を適当に生きているのだな、と幸助は思った。

幸助は改めて光咲を見てみる。

髪が長くて幸助よりは背が低い。どこにでもいる普通の女子だ。

だが、目つきだけは異様に鋭く、その目で睨まれたらライオンだって逃げ出しそうだ。

幸助は、さっきの時は言い合いをしていたからそのような目つきをしているのだと思ったが、いまだに直っていないところを見ると普段からこんな目なんだなと解釈した。

「・・・何見てんの?」

ほんの数秒だったと思うが、見ていることに気が付いたらしい。

彼女は何に警戒しているのだろう?

それとも今は自分のガードマンをしてもらっているからだろうか、と幸助はそんなことを思った。

「あぁ・・・いえ、何でもないです」

「・・・どうせあんた、あぁこいつの胸小さいなぁとか思ってたんでしょ?」

「・・・は?」

「まったく、男子はいつもいつもそこばっかり!中身なんて関係ないのね」

「・・・」

どうやら光咲は自分の胸が小さいことにコンプレックスを持っているようだった。

「大体、胸が大きくて何の得があるのよ!重心が前に傾くわ、激しく動けないわ、それに姿勢も悪くなるわ」

「・・・僕は胸の大きい人はあまり好きにはなりませんけどね」

「本気で言ってる?」

「まぁ、はい。大きすぎると逆に気持ち悪いというか・・・それに活動範囲が狭まりそうだなって思ってましたし」

「本当?」

光咲は立ち止まったかと思うと、そのまま満面の笑みを浮かべた。

「私と同じ考えの人と出会ったなんて初めて!わぁ嬉しいなぁ!あぁ、でも男子か・・・でもいいやそんな事!なんで今まで気づかなかったんだろう?近くにこんな人がいたなんて!これからもよろしくね!幸助!」

幸助はこの人は単純でどこか抜けてると感じた。

機嫌がよくなったのだろう。光咲はスキップをし始めた。

「ところでさ、幸助って席次どのくらいなの?」

「あぁ・・・いやまぁ、いつも1位なんですけど・・・」

「え!?そうなの!?」

光咲のテンションが下がっていくのは誰が見ても明白だっただろう。

「あ、あの光咲さんは何番で・・・?」

「・・・下から数えて10番目」

「・・・」

かなりの落差が二人の間にはあった。

「・・・あの・・・今度勉強教えてくれない・・・?」

「・・・あぁ、いいですけど・・・」

幸助は悪いことを言ってしまったと思った。

しかし、これで勉強を教えて光咲の席次が上がれば結果オーライだなとも思った。

でも、謝っておいた方がいいのは確かだった。

「あの・・・すみま・・・」

幸助は言葉を飲み込むしかなかった。

なぜなら、光咲が幸助を・・・いや。幸助の後ろを睨んでいたからだ。

さっきまで見せなかった顔だ。

この目で睨まれたらライオンじゃなくても、化け物だって気圧されてしまうだろう。

「・・・あ、あの・・・?」

「幸助!こっち!」

そういうと光咲は幸助の手を取って走り始めた。

「え?え!?ちょ・・・」

「訳はあとで説明するから!」

光咲はぐんぐん直進していく。

でも、このまま突っ切ったら・・・。

「そこは壁・・・」

「いいから!大丈夫!」

何が大丈夫なのだろう?

どんどん壁が近くなってくる。

もうだめだ!ぶつかる!

そう思った瞬間、周りが目も開けられないほど明るくなり、幸助はそのまま闇の中に呑まれていった。