読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

virgo catの小説倉庫

virgo catが初の小説に挑戦!(前から書いてみたかった)

奇跡は偶然 出会いは必然 ~羽河 幸助~

「起立。礼」

さようなら~、と学級長が号令をかけ、今日も1日が終わった。

入学から3か月がたったが、未だに友達がいない。というかできない。

だから家に帰るしかないのだが・・・。

 

「羽河 幸助」

僕の名前である。

高校1年。自分で言うのもなんだが、頭はいい方である。

中学生のころの友達がいないので、勿論誰とも仲良くなれないということだ。

進学校に通っているから、誰もいないのだと思うが・・・。

学校生活は充実しているか?と聞かれれば、勿論勉強の方は上手くいっている。

ただ、今ちょっとした問題があって・・・。

 

「おい、羽河」

来た・・・見つかってしまった。

「金、用意できてんだろうな?」

セリフからもわかるように、僕は今恐喝されている。

なぜか?

理由は話せば簡単だが、今声をかけてきたのは僕の小学生の時の「いじめっ子」である。

ちなみに中学は違ったので安全圏だったが。

なんで進学校にコイツが・・・と思ったが、他の人から話を聞けば僕がこの学校に来るのをわかっていて、いじるためだけに来たらしい。

本気を出せばできるやつなのに・・・と思ったものだが、考えて見ればそれだけの理由だというのならばあまりにもったいない。

こういうやつは、最後に退学が落ちなのだが、生憎まだ先生に目撃されていない。

 

「まさか用意できてないとは言わないよなぁ?」

・・・言い忘れていたが、教室を出た廊下で行われている。

堂々としすぎだ。

「用意できてないやつはお仕置きされないとわからないよなぁ?」

バキバキッと後ろで指を鳴らす音が聞こえた。

僕も心の中ではいろいろ思っているが、言えるはずもない。

後ろから気配を感じる。

しかし避けようとは思わない。

・・・もう、慣れた。

そしていつもの展開だろう。

殴られ、蹴られ・・・それだけ。

誰も、助けてくれない。

関係ない、と言わんばかりに。

さっき号令をかけた女子級長も、助けてくれない。

知らない人だから当たり前。

それだけだ。

覚悟は・・・できた。

「おい!ちょっと待ちな!」

いつもの・・・ように?

いつもと違う声が入った。

思わず振り返る。

と、みんなも同じ方向を見ていた。

時が止まったような光景だった。

そこにいたのは、強そうな男子でも、先生でもなかった。

いたのは・・・。

「弱い者いじめなんて、あんた人間が小さいなぁ」

・・・女子、だった。

それも普通の、長い髪の。

女子だった。

「あ?なんだお前?」

「私?私はあんたの邪魔をしに来た単なる邪魔者だぜ?」

「邪魔だぁ?できるものならやってみろよ!受けて立つぜ」

すると、その女子がずかずかと近づいてきて、こういった。

「ふ~ん、いいんだそんなこと言って」

「・・・あ?」

「私、あんたの家知ってるけど」

「?・・・それがどうした」

「つまりは親にチクるよぉ~ってこと」

「だからなんだ、証拠もないのに」

「・・・今の声はすべて録音した」

そういって彼女は胸ポケットからすっと電話を取り出した。

「!!」

「私、足は速いからすぐにでも行けるんだけどなぁ~」

「ま、待て!母ちゃんに知られたら・・・やばいんだ!そ、それだけは・・・」

「あ~ら、結構弱いのね。ま、自分から撤退するっていうのはいい心構えだけどね。でも、どーしよっかなー」

「わ、わかった!何でも聞く!何でも聞くから!」

土下座した。

・・・あいつが、土下座するなんて見たこともない。

「んー、そうね、そこまでいうなら。いい?この子にもう手出しはしないで。見つけたらすぐ言うから」

「わかった!コイツにもう手出しはしない!」

「素直ね。今日は見逃すから帰っていいわよ?」

彼女がそういうと、あいつはチーターにでも追いかけられているかのように逃げた。

・・・あいつあんな速かったのか・・・。

というか、やり取りがバカバカしかった。

あんな方法でいいのなら僕も最初にやるべきだっただろうか。

「大丈夫?」

と、また時が動き出したこの学校で僕に対して呼びかけがあった。

「あ、はい・・・」

まぁ、当たり前だが声をかけてきたのは、さっきの彼女だった。

「まったく・・・高校生にもなってみっともないわねぇ・・・そんなんじゃあ社会で働けないよ?」

まぁ、確かにそうだけど・・・。

とりあえずお礼は言わないと。

「あの」

「ん?」

「ありがとうございます」

「・・・へ?」

「あ、いや、だから・・・助けてもらって・・・」

「?・・・あぁ、いや別にそういうのいらないから。やってみたかっただけだし」

・・・やってみたかったって。

それじゃあ、この人の好奇心が無ければ僕は助かっていなかったのか?

でも好奇心に助けられたって・・・。

複雑な心境である。

「で~、けがはないよね?幸助」

「あ、はい。何もされなかったので・・・」

・・・ん?

今なんか違和感が・・・。

・・・って

「なんで名前知ってるんですか!?」

「え?同じクラスでしょう?」

あれ?そうなの?

「というか隣の席じゃない」

そう・・・なのか?

あ、でも隣に誰かいたけど・・・話したこと、なかったな・・・。

「まさか幸助、私を覚えてないってことはないよね?!」

「あ・・・いえ、あの・・・話したこともないですし・・・」

「はぁ!?」

嫌な予感・・・。

「話してないってだけで同じクラスの人も覚えないわけ?はあーあきれた!助けて損したわね!」

そういって彼女は帰ろうとする。

・・・って待て待て!

「あ、あの!悪かったです!こちらから謝り・・・」

「敬語」

と、立ち止まり、僕の言葉を制止して彼女は言った。

「・・・え?」

「だから敬語。同級生に対して敬語は無いでしょう?」

え・・・でも、初対面だし・・・。

「これだからあなたは弱いのよ」

女子に言われちゃ終わりだと思うが・・・。

「聞いててむず痒くなるわ。そういうの」

・・・でも性格だから仕方がない、といっても今は無駄な気する。

「まぁ、いいわ。それより、さっきのやつが戻ってきてあんたをボッコボコにする可能性があるから、守ってほしいなら一緒に帰ってもいいのよ?」

・・・上から目線だなぁ・・・。

助けてもらったのでそんなことは言えないが。

「幸助、部活も入っていないんでしょう?」

「そう・・・ですけど」

「で、今から帰る?」

「はい・・・」

「帰り道は?」

「えっと・・・」

窓から外を見る。

「あのルートから・・・」

「奇遇ね。私も同じよ」

同じ・・・今まであわなかったのが不思議だ・・・。

いや、見たことが無かったからか。

「じゃ、帰りましょうか」

「・・・あ、ちょっと待ってください!」

そういって階段を降りようとする彼女に声をかけた。

「何?」

「あの・・・お名前は?」

一応助けてもらったのだ。名前ぐらいは聞かないと。

「私?」

そういって彼女は。

「光咲」

自分の名前を、述べた。

「美原 光咲。名前言ったんだからちゃんと覚えてよ?」